〇次発酵マットについて考える
目次
発酵マットとは…?
最も一般的な回答としては「発酵マットは広葉樹を粉砕したおがくずマットをバクテリアの力によって発酵させたもの(したもの)」のことです。
カブト、クワガタ飼育を始めたばかりの人にとって最初に立ちはだかる用語の壁がこの〇次発酵マットについてきちんと説明を行えていないインターネット上の情報です。
〇〇クワガタには二次発酵マットが良い…
〇〇クワガタは〇〇の三次発酵マットで爆産する…
一次発酵マットは再発酵するから〇〇に使う際には…
私自身も「なるほど。一次、二次、三次と発酵の段階があってそれによって対応種や用途が違うんだな」と無理やり納得するところから始まりました。
初心者としてしばしブリードを続けていくうちに疑問が生じます。
「あれ、そういえばこの購入してから1年経った「商品名 二次発酵マット」は色が少し変わっているけど二次発酵マットのままなのかな?そもそも発酵って水分とある程度の温度があれば発酵(分解)は進み続けているんじゃ?」
ネット上で一次発酵マット、二次発酵マット、三次発酵マットを調べてみると大体、同じようなことが書かれています。
一次発酵マット・・・「粉砕しただけのおがくずを発酵させたマット」
二次発酵マット・・・「一次発酵マットにさらに、水分と温度を加え、もう一度発酵させたマット」
三次発酵マット・・・「二次発酵マットをさらに発酵させたもの。ほとんどの種のクワガタに最適です」
一次、二次、三次と数的段階を踏むならばまずは0を知らなければいけません。
では架空の二社に作ってもらいましょう。分かりやすく極端な例で示します。
まずは双方ともに広葉樹の廃ホダ(朽木)を用意していただき、これを粉砕しました。
機械的に乾燥状態を保っているため発酵は起きづらい状態をキープしています。
ここを仮に0次とします。
A社とB社が一次発酵マットを作ります。
添加物と一緒に大型撹拌機に入れA社は5か月間攪拌、加温します。
B社は1ヶ月間攪拌、加温しました。
出来上がりました。
A社「一次発酵マットです」
B社「一次発酵マットです」
これが皆さんの手元にショップの謳い文句と一緒に届いています。
さらにこれを元にA社とB社が今度は二次発酵マットを作ります。
添加物と一次発酵マットを大型撹拌機に入れ、A社はさらに5か月間攪拌、加温します。B社も同じように添加物と一次発酵マットを投入し1ヶ月間攪拌、加温しました。
出来上がりました。
A社「二次発酵マットです」
B社「二次発酵マットです」
A社の商品は10か月間回されています。
B社の商品はそれに比べて2か月間です。しかし両方「二次発酵マット」です。
さらによくよくA社の商品を見てみましょう。10か月間も回したせいでかなり発酵、分解が進んでしまい、なにやら黒ずんで土に近くなっています。
なんと見た目はC社が販売している「三次発酵マット」とそっくりです。
これは極端なたとえ話ですがどうやら「〇次発酵マット」というのは作り手側が作り手側の手順に合わせて銘打っているものか、又は「〇次発酵!」と宣伝、ブランド化するために使われている言葉であるようです。
つまりネット上で自分が育てたいクワガタに適切なマットを選びたい場合は自分で作成する場合や生産工程が公開されているマットを指定して情報を載せている場合を除き「〇〇クワガタには二次発酵マットが最適」などと書いているものは厳密には正確な情報であるとは言えないということになります。
もちろん便宜上、
ほぼ朽木のままの色~薄茶色を「一次」
茶色~こげ茶を「二次」
こげ茶~黒を「三次」として大多数の人間が認識することに意味はあるので便利な言葉ではあるのですが、鵜呑みにするのは適切ではないようです。
ではどう考えるべきかといいますと発酵を区切られた段階ではなく常に進行しているものだと捉えてください。水分とバクテリアが活動できる程度の温度があれば常にマットはゆるやかに分解されていきます。「〇次発酵マット」がぴったり!ではなくクワガタの性質と照らし合わせ、木材がどのくらい分解された状態をこのクワガタは好み、栄養価を吸収できるのかと考える必要があります。
また〇次発酵マットの数字が進めば進むほど、高栄養だと謳っている商品もありますがじゃあ百次発酵マットは究極の栄養価なのかと考えるとむしろ逆であり、限界まで微生物に分解されつくして栄養価は殆どなく腐植、土になっているはずです(添加物は残留しますがカブト、クワガタの多くは添加物をそのままの形で吸収できません)
つまり、クワガタやカブトムシにとっての有効な栄養価はもともとの木材(おが)に含まれるセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの含有量という上限があるということです。これらがどのくらい分解されているのか、どの分解具合が適切なのかをマットを見て触って判断できるようになることが最も重要です。
リグニンなどのお話や、各クワガタの好む腐朽具合、共生菌のお話はまた別の記事でまとめようと思っています。
まとめ
・発酵マットは、常にゆるやかに発酵が進行している。
・クワガタの性質と照らし合わせ、木材がどの程度進んだ状態をクワガタは好むか、栄養価を吸収できるかを考えることが大切。
・クワガタやカブトムシに有効な栄養価「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」には含有量という上限がある。
・どの分解具合が適切なのかをマットを見て触って判断できるようになることが最も重要。